今年2月にCrunch Fitness(クランチ・フィットネス)社長に就任したチェクアン・ルイス氏はピザハットの元COOです。ルイス氏は既存のクランチ経営陣とともに急成長へと準備万端です。「週に1 店舗以上オープンさせれば、1,000店舗、さらには1,500 店舗にまで急速に拡大することは、まったく非現実的ではありません」と語ります。
ルイス氏は、テキサスのクランチフィットネス プレイノ店で温かく迎えられましたが、彼が社長に就任したというお知らせや宣伝は社内でほとんどありませんでした。「私は1月に入りましたが、(私のことを)誰も知らないと思います」と、2月にクランチ・フィットネスの社長に任命されたルイス氏は語ります。「正直に言うと、私はその方が好きです。このほうが、独自の視点を得ることができます」。
ルイス氏自身は目立つことを控えたいのかもしれませんが、クランチはフィットネス界で確実に注目を浴びています。
クランチはフランチャイズタイムズTOP400ランキングで前年より37位上昇し79位にランクイン。2023年のシステム全体の売上高は前年比23.3%増の9億5,700万ドルでした。ニューハンプシャー州ポーツマスを拠点とするこのフィットネスブランドは、プライベートエクイティ企業TPGが所有し、41州+ワシントンDC、オーストラリア、カナダ、コスタリカ、ポルトガル、プエルトリコ、スペインにある490以上展開する店舗で250万人以上の会員を誇っています。同社は昨年、米国と海外で71拠点を追加し、店舗数を16.8%増加させました。
他のフィットネスブランドと比較すると、25位のプラネットフィットネスは2023年に店舗数が6.8%、50位のエニタイムフィットネスは1.3%増加しました。プラネットフィットネスは昨年、2,575拠点で45億ドルを売上げ、引き続きフィットネス部門をリードしています。エニタイムは、部門トップの5,123 店舗で、システム全体の売上高が22 億ドルで終了しました。
約1,124坪を擁するクランチのテキサス州プレイノ店では、さまざまな体型、サイズ、年齢の会員が、有酸素運動マシンや筋力トレーニングマシンの列で息を切らしてトレーニングする一方、筋肉隆々でフリーウェイトを持ち上げるような会員もいます。店内のカラフルな壁には“ハッスル・フォー・ザ・マッスル”などモチベーションを高める様々なフレーズを掲げ、また、ジムに行くことへの圧迫感を緩和したいと開始当初から掲げている同社の特徴的なブランドフィロソフィー“NO JUDGMENTS. NO LIMIT.(決めつけない。制限しない。)”の文字も際立っています。
クランチフィットネスは、総売上高、店舗数、会員数において、低価格帯で高価値を提供する同業他社に後れを取とっていますが、近年、顧客獲得でライバルたちに競合できるほどの勢いを得ているとルイス氏は言います。テキサス出身のピザハットの元COOである40歳のルイス氏は「我々は間違いなく正しい方向に進んでいると同時に、成長の余地は大きく残されており、成長を続け、さらに良くなるチャンスがたくさんあることもわかっています。我々のシステムには1,000軒規模で複数の店舗を運営するFCがおり、現在進展中の契約やすでに契約を締結済みのものもあるので、週に1店舗以上開店すれば、かなり早い段階で1,000店舗、さらには1,500店舗に到達することはまったく非現実的ではありません」。
クランチの35年間の歴史は、スタート、ストップ、そしてリスタートの繰り返しでした。1989年に元ストックブローカーである ダグ・レビン氏 によって設立されたクランチは、マンハッタンのグリニッチビレッジの小さな地下室にある風変わりなフィットネス スタジオとして始まりました。“ノー・ジャッジメント”というキャッチフレーズを考案したのはレビン氏で、自転車を使ったヨガ、男女混合レスリング、ポールダンス、カラオケサイクリング、ドラッグクイーンがインストラクターの「腹筋、太もも、そしてゴシップ」クラスなど、ユニークで楽しいグループ エクササイズクラスを立ち上げました。その常識にとらわれないコンセプトと低コストのモデルが会員に受け入れられると、同社は大きな店舗スペースに移転し、他州でも急速に拡大しました。
しかし、多くのジム同様に、クランチは会員数の減少と高額なリースに直面し、さらに大不況で大きな打撃を受けました。2009年に破産申請し、再編後、コネチカット州ノーウォークに最初の直営店をオープンし1年後にフランチャイズを開始しました。パンデミックで多くのジムチェーンが再び苦戦する中、同社はクランチ・ライブを通じてバーチャルクラスを提供することで持ちこたえました。2020年から2022年にかけて米国で93の新規店舗を追加し、会員数はパンデミック前の水準と比較して31%増加。クランチ・ライブの成功を受けて、同社は数百のオンデマンドワークアウトを備えた新しいストリーミングプラットフォーム、クランチ+(プラス)を導入しました。
クランチを開設するための費用は、ジムの床面積が約703坪~1124坪の場合、600万ドル以上になる可能性があります。また、オープンから12〜24ヶ月の店舗の平均総収益は2023年に300万ドル、49〜60ヶ月の店舗の平均は230万ドルでした。
ルイス氏はフランチャイズ店の収益性向上を目指しており、運営コストを削減すると同時に会員の体験を向上させることで、収益性向上のチャンスがあると考えています。
「当社は、店内ツアーと販売プロセスの改善に注力し、クランチのメリットを強調して会員権の販売を増やしてきました」とルイス氏は述べます。「また、フィットネスクラブ分野において当社の差別化要因であるパーソナルトレーニングの収益拡大に注力してきました。当社は引き続き、収益性の高い総合的なフランチャイズに重点を置いていきます。現在の一般的な経済状況の背景を見ると、人々はよりコスパ重視になっています。当社がクランチの体験の中で提供していることは、人々が価格面で少しでも安心感を求めているときに、同時に価値を高めることです」。
クランチには3つの会員レベルがあります。ベース、ピーク、ピーク・リザルトです。ベース会員は月額9.99 ドルで、1 つの店舗で有酸素運動および筋力トレーニング機器を備えたジムフロアにアクセスできます。ピークとピーク・リザルト会員には、それぞれ24.99ドルと29.99ドルで、さまざまなグループフィットネスクラスへのアクセスと、400を超える拠点への訪問オプションが提供されます。選べる会員レベルとさまざまなクラスの提供により、同業者との差別化が図られています。「私たちは、各会員の個々のニーズすべてに対応し、また、会員が安心して支払える金額に応えたいと考えています。私たちは、すべての人にとってあらゆるものを提供できるよう努めていますが、今改善が必要なのは、会員と全スタッフがドアを開けて入った瞬間から、帰る瞬間までの体験を伝説的なものにすることです」とルイス氏は語ります。「これは、私がPizza Hut で行ったこととまったく同じです。結局のところ、素晴らしい製品の価値を提供しながら、顧客体験を可能な限り最高のものにすることがすべてです」。
ニューヨークの複数店舗を運営するアサッフ・ガル氏は、他のジムブランドではなくクランチを選んだ主な理由として、クランチの強力なブランディングと新しいフィットネスクラス導入への取り組みを挙げました。「クランチは、常に新しいクラスで革新を続け、会員に価値をもたらしています。人々はクランチの名前とクラブが提供するものを知っているので、ニューヨークでブランドを成長させるのは私にとっては簡単でした」と、2012年からフランチャイズ店を経営するガル氏は語ります。彼はブロンクス、クイーンズ、ブルックリンに6店舗を経営しています。
ルイス氏は、クランチは今後も新規開発のためにマルチユニットFC拡大に傾倒していくだろうと述べ、米国内のFC店の約40%が3拠点以上のクラブを開店しているか、その準備段階であるといいます。また、グローバル市場での新規開発がさらに進むと期待しています。「我々は、海外にもっと展開する必要があります。同業他社と同じく、私たちにとっての課題は、ジムにベストなロケーションを見つけることです。市場へのスピード感は、私たちにとって依然として大きな鍵になります。新規オープンするには、平均6〜9ヶ月かかりますが、理想的には、すべての新規ジムを6ヶ月でオープンしたいと思っており、ジムを居抜きで引き継ぐ場合、非常に現実的です。大型小売スペースも今や絶好の立地です」。
Undefeated Tribe(アンディフィーテッド・トライブ)CEOのトニー・ハートル氏はスムーズにクランチをオープンさせたFCオーナーのひとりです。昨年、同氏は5ヶ月間でテキサス、オクラホマ、ミズーリに5店舗をオープンしました。年末までに27店舗をオープン予定で、137店舗を開発する権利を持っています。アンディフィーテッド・トライブは2023年に同社の株の過半数を投資会社VMGパートナーズに売却し、この取引はVMGのフランチャイズ分野への参入を象徴するものとなりました。
ハートル氏によると、同グループではデータ分析を駆使して店舗選定を行い、ゼネラルマネージャーやスタッフには「カーブサイドコーチング」と呼んでいる方法で会員数の増加と店舗のパフォーマンス向上を実現するようにしたことで、会員体験を可能な限り向上させることに成功しました。「私たちは会員数だけを求めているのではなく、会員に施設を利用してもらうことで会員を維持したいと考えています。それにはすべて基本に立ち返ることです。きれいな駐車場、フロントのスタッフの笑顔、店内の音楽、エアコンの調子のチェックを怠らないなどです」とハートル氏は語りました。また、同グループでは画期的なモデルを導入しました。「私たちが導入したもう ひとつのことは、ゼネラルマネージャー向けのマネージングパートナープログラムです。このプログラムでゼネラルマネージャーになるには1 万ドルの投資が必要です。これにより、ゼネラルマネージャーとはビジネスの最終結果を共有します。私たちは経済的にも感情的にも並列なのです」。
*この記事の全文オリジナルは、Franchise Times(英語版)
Crunch Fitness Harnesses Value to Drive Double-Digit Sales Growth をご覧ください。
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